こんにちは、歯科衛生士 坂です。
5月11日(日)東京にて,開催されたオーラルケア㈱主催、スウェーデン王立マルメ大学歯学部 カリオロジー講座,ダン・エリクソン上級教授による来日講演に参加させて頂きました。
講演は「改めて考えよう。「予防歯科」とは何か?-予防歯科の理念と口腔の健康を支える歯科医院づくり-」がテーマでした。
予防歯科が確立されたスウェーデン、歴史や文化、制度も辿ってきた道が違う中で日本の予防歯科の未来に繋がる貴重なお話を聞かせて頂きました。
砂糖の摂取について、口腔内のリスクだけでなく肥満や糖尿病のリスクが大きいこと。
フッ化物が歯磨き粉に添加されるようになってからむし歯は減りましたが、日本ではスウェーデンに比べて歴史が浅く、濃度1450ppm歯磨剤を正しい使い方の周知は弱いこと。
むし歯を削るタイミングの判断が異なること。7~8年で50%の確立でやり直すことになってしまうこと。歯質を失わないようにするには進行状況や合併症のリスクを考えて行う必要があること。
スェーデンではリスク評価と予防プログラムがリスク別に行われています。
リスクを知って原因を除去すること、そして個々に合った対策をすることが当たり前です。
日本とは考え方も取り組み方も違います。
日本はまだ痛くなったら歯科へ行く、口腔内の現状やリスクを知ることなく受診を終えてしまっています。
「何かあったら来てください」の「何か」を医療者も患者さんも知っておくと未来が少し変わるのでないかと思うのです。
むし歯になる要因は脱灰と再石灰化のバランスです。歯磨きだけでは守りにくい方もいます。甘い物との関わり方、細菌の割合、フッ化物、唾液の力も関係します。
削って詰めるだけ、歯石を取るだけでは口腔内が健康になったわけではありません。
そこからの+αの取り組みを歯科衛生士ができることはたくさんあると私は学びました。
むし歯を治したら、歯石を取ってきれいな歯になったら患者さんに喜ばれるでしょう。
しかし原因となるプラークをプロフェッショナルケアできれいにすることで、むし歯、歯周病を未然に防ぐことはもっと素晴らしいことです。
スウェーデンでは2011年にprevention (予防)が確立され、2021年にはhealth promotion(健康増進)へと
日本よりもずっとずっと先を進んでいてお手本であり、学ぶべきことが多くあります。
些細な会話から糸口を見つけて「共感」する、お互いがどういう人なのかしっかりとコミュニケーションをとっていくことが大切です。
少しの気付きで変わることもあります。歯科衛生士だからこそ伝えられることがあると思います。
歯磨きは真面目な日本人は幼少期からの習慣で多くの人が行っています。しかし、歯ブラシ1本で!
お掃除道具1つですべてきれいにしましょうというのはプロでも至難の業です。
フロスや歯間ブラシ等の歯と歯のアイテムが有効だとは知らない、教えてもらえないのです。
少しコツを知るだけで、もっと早くから知っておけばよかったとなるのに。
器用さや歯並びによってどうしても難しいところもあると思いますが、そこは歯科衛生士の腕の見せ所です。
こんな風にセルフケアの質を高めることも予防のひとつだと思います。
これからの歯科衛生士には「共感」できること「health promotion」できることが求められると本講演でもお話されていました。
何歳からでもどんな口腔内でも予防はできます。
生涯自分の歯で美味しく食事ができるように。
子どもたちがむし歯から大人の歯を守れるように。
一緒に伴走していける歯科衛生士として知識と技術も日々アップデートし続け予防から健康増進できるように、
そしてスタンダードになるように取り組んでいきたいと思います。